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生成AI時代の歩き方  2江戸に学べ

もう、15年前になりますが、2008年、NHKの大河ドラマ「篤姫」は、今までにない高視聴率で、大変な人気だったようです。私も毎週楽しみに見ていました。なぜ、こんなに人気なのかが、ずいぶん話題になりました。私は、戦争シーンが少なく、女性にスポットを当てていることが良かったと思います。

しかし、本当のところ、今日の世情、もしくは視聴者の心理、もっと言うと、今の日本が「落日の徳川家」と重なるからではないでしょうか。だから、どんなに一生懸命頑張っても何かが滅びゆく大きな流れの中で、篤姫が健気に明るく生き抜こうとする姿がとても清々しく感動的に思えたのでしょう。

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今、どういう日本が滅びようとしているのでしょうか。皮肉にも篤姫たちを葬った社会、つまり黒船来航から始まった、欧米を目標としてきた日本社会なのかもしれません。明治以降、日本は欧米に追いつくために富国強兵、殖産興業をスローガンに国力を伸張させ、日清、日露戦争を経て、ようやく列強に追いついてきました。ところが太平洋戦争の敗戦で、ゼロに戻り、戦後は強兵を捨て、殖産興業で、再度欧米にチャレンジして世界第2位の経済大国にまでなったのです。

さらにバブルの波に乗り、米国まで追い越しそうになったとき、1991年、バブル崩壊が起き、30年もの長い間立ち直れずにいました。その後、米国主導のグローバリゼーションの中で、やっとBRICsの台頭に活路を見出しましたが、それもつかの間、2008年に発生した世界同時不況のもと、その活路も失い、本当の行き詰まりに直面し始めました。

もともと日本は、欧米列強の勢いに押されて、江戸幕府が倒れ、欧米のシステムを猿まねのように取り入れた側面があります。それから140年間は、欧米への憧れから、そのシステムを表面的に取り入れながらも日本的経営で成功してきたのです。ところがバブル崩壊後のこの10年、余裕のない日本企業は日本的経営を捨て去り、非正規雇用社員が4割もいる、先進国でも類を見ない社会になってしまったのです。

しかし、今の日本は経済の停滞や労働問題、少子高齢化などの課題に直面しています。また、国際的な競争力も低下しており、新興国の台頭によって日本の地位が揺らいでいます。さらに、政治不信も根強く、社会的な不満や不安も広がっています。

このような状況下で、大河ドラマ「篤姫」は、歴史的な時代や社会の中でひたむきに生き抜く主人公の姿を描いていました。それは、今の日本人の心情や現実と重なる部分があるため、多くの人々に共感を呼び起こし、高い人気を得たのかもしれません。

また、「篤姫」は女性の視点に焦点を当てていたことも一因として挙げられます。女性の社会進出や権利の向上が進んでいる現代社会において、女性の力強さや生き抜く姿勢に共感する視聴者が多かったのかもしれません。

さらに、歴史的な背景を持つ大河ドラマとしての魅力もあったと思います。日本が戦後復興を遂げ、経済的に成功してきた過程で、何かを失ったり犠牲を払ったりしてきた歴史は、今の日本人にとって考えるべきテーマなのかもしれません。

総じて言えることは、大河ドラマ「篤姫」が高視聴率を獲得し、人気を博した要因は多岐にわたるということです。戦争を扱わずに女性の視点を描いたこと、現代の日本の課題と重なる要素を持っていたこと、そして歴史的な背景を持つ魅力があったことが、その理由の一部かもしれません。

山本七平(1921〜1991年)はその著書『指導者の条件』(文藝春秋社刊)の中で、日本型経営を作り出したのは、「一揆」だと言います。一揆というと百姓一揆という抵抗運動をイメージしますが、もともとは、利益に基づいた集団規約を指すのです。そして、その建前は全員平等なのです。

江戸幕府はなぜ長続きしたのか。様々な要因が考えられますが、徳川家康が、その「一揆」という日本的組織を十分把握したうえで、江戸幕府のシステムを作った要素が大きいと思います。士農工商それぞれの階級が独立していて、それぞれ皆、哲学と誇りを持っていました。そして、同じ階級の中では皆が平等な組織体系の中で、共同体を形成していったのです。もちろん武士階級は身分へのこだわりを持っていたように見えますが、よく見ると、そうでもないところもあるのです。実は身分間の流動性があったのです。勝海舟のように曽祖父が検校として蓄財したおかげで武士になれた者や、商人に借金が返せない藩が、その商人の息子を養子にするという形で一定期間藩主にして、借金を棒引きにしてもらったという例もありました。

それに対して、欧米の社会は個人主義的で、階級差が大きく、利益を追求することが重視されます。そのため、結果的に日本的な共同体主義的な経営スタイルが長く続くことができたのです。しかし、バブル崩壊後の日本経済の苦境により、企業は利益最大化を追求するために非正規雇用を増やすなど、日本的な経営スタイルを捨てざるを得なくなりました。

現代の日本の社会は、非正規雇用者が増加し、経済格差が広がるなど、問題が山積しています。これに対し、山本七平は一揆の精神や組織を経済の中に取り入れることで、日本経済を立て直す可能性があると主張しています。一揆では利益分配や労働条件を合意に基づいて決めることが重視され、共同体の一員として平等に扱われることが特徴です。

このような共同体主義的な経営スタイルを取り入れた企業や地域が、社会的な安定や経済の発展を促すことができる可能性があります。しかし、現代のグローバル経済の中では、競争力や利益最大化が求められるため、このような日本的な経営スタイルがいかに活用されるかは課題となっています。

経済のみならず、社会全体の課題解決にも日本的な組織や価値観を取り入れることは有益であると考えられます。しかし、それが現代の国際社会との調和や競争力との両立にどのように繋がっていくかは、慎重に検討すべき問題であり、日本のリーダーや経営者に求められる能力の一つと言えるでしょう。

明治に入ると、欧米のシステムに合わせようとしたのですが、もともと日本では、外部のシステムを日本的に改良して入れるものは入れる反面、受け入れられないものは頑として拒むという土壌がありました。日本的経営といわれる下から上へ稟議を上げるボトムアップ型の組織は、まさにトップダウン型の欧米型ツリーシステムを取り入れた中で、日本型一揆組織を実現した組織形態だったのでしょう。

しかし、この30年の間に、日本企業は派遣社員・期間従業員を増やし、正社員も、年配者からどんどんリストラすることで、500年以上続いた盟約に基づく日本型一揆組織を排除したのです。その結果、日本の企業の生産性は、先進国中最下位にまで転落したのです。それでは、これからどのようになるのか。奇しくも、ドラマで篤姫が江戸城を去る前に言った言葉にヒントがあります。

「私たちが残すのは、徳川の城ではない。徳川の心を残すのです」江戸時代は9割近くが農民で、農民も一部の小作人以外は自営であり、そのリーダーは民意で選ばれ、農村は自治が中心に営まれていました。今企業は、中小企業が9割です。農村と中小企業は、組織の9割を占めているというところが共通しています。この苦況の中では、篤姫が言うように「徳川の心」を思い出せば良いのです。
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「徳川の心」とは、徳川幕府が作り上げた日本の村落共同体の心なのだと思います。徳川幕府の崩壊とともに幕を開けた欧米追従の国家はもう限界です。
先ほど述べた明治以降の日本型経営は、実体は村落共同体と欧米型組織との折衷だったのです。今こそこの不況下で、新しいスタイルを持った本来の日本型組織の経営にすることが、大切なのです。

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日本型経営の特徴は、一揆や村落共同体のような日本的な組織をシステム化することです。江戸時代の経営スタイルは、地域のリーダーが民意に基づいて選ばれ、自治が中心に営まれるという特徴がありました。また、明治以降の日本型経営は、欧米の組織モデルとの折衷で、和洋の要素が取り入れられました。

しかし、近年の日本企業は、派遣社員や期間従業員の増加、正社員のリストラなどを行い、日本型一揆組織を排除してきました。その結果、日本の企業の生産性は下がり、先進国の中で最下位になってしまいました。

今後は、不況の中で新しいスタイルを持った本来の日本型経営を取り戻すことが重要です。そのためには、徳川幕府が作り上げた村落共同体の精神を思い出し、日本的な組織の経営を実現する必要があります。

そして実は生成AIは、この日本型経営システムをより効率よく効果を発揮するとんでもなく素晴らしいツールなのです。

欧米型の経営はMBAなどエリート教育で磨き上げた、非常に能力のたけた層による効率的なトップダウンの仕組みです。しかしそのエリート教育というのは、論理力、情報収集力、判断力がより訓練により卓越したスタッフの独断にかかっています。
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生成AIを活用すれば、このエリート集団の論理力、情報収集力、判断力を一般の人民も活用することができるのです。よってみんなが生成AIを活用して議論することで、一握りのトップエリートの決断を凌駕する決定を作ることさえできるのです。

今こそ日本型経営を発揮させるチャンスが到来したといえます。

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