« 大不況を大好況と感じられる方法 | メイン | 生成AI時代の歩き方 終戦記念日 »

篤姫

今日、NHKの大河ドラマ「篤姫」の最終回です。今までにない高視聴率で、大変な人気だったようです。私も毎週楽しみに見ていました。なぜこんなに人気なのか、が話題になっています。戦争シーンが少なく、女性にスポットをあてているのがいいのではないでしょうか。そして篤姫役の宮崎あおいさんがとてもいい味を出しています。NHKの朝の連続ドラマ「純情きらり」のときも大変光っていました。

私はもちろんそういう条件も含めて、今日の世情、もしくは視聴者の心理、もっと言うと今の日本が落日の徳川家と重なるからではないでしょうか。どんなに一生懸命頑張っても滅びゆく大きな流れのなかで、篤姫が健気に明るく生き抜こうとする姿がとてもすがすがしく感動的に感じるのでしょう。そういえば「純情きらり」も、昭和初期から太平洋戦争へ突入する、日本が滅亡へと向かう時代を宮崎あおいさんは好演していました。もしかして、彼女の初々しい演技は、滅亡に向かう時代のなかで、その次に生まれる時代の希望の小さな光みたいな存在に感じられるのかもしれません。

今、どういう日本が滅びようとしているのか。それは篤姫の時代、黒船来航から始まった、欧米を目標とする社会なのかもしれません。明治の時代、欧米に追いつくために富国強兵、殖産興業をスローガン、日清、日露戦争を経て、ようやく追いついてきたな、と感じたら、太平洋戦争の敗戦で、ゼロに戻り、戦後、強兵を捨て、殖産興業で、再度欧米にチャレンジして世界第2位の経済大国まで来たのです。

そして、バブルで米国まで追い越しそうになったとき、バブル崩壊が起き、10年立ち直れずにいました。その後米、国主導のグローバリゼーションの中で、BRICSの台頭に活路を見出し、それもつかの間、今世界同時不況のもと、その活路も失い、本当の行き詰まりに直面し始めました。

もともと日本は、西欧列強の勢いに押され、江戸幕府を倒し、西欧のシステムを猿まねのように取り入れたにすぎません。それから140年間、欧米への憧れから、その猿まねのシステムを表面的に取り入れながらも日本的経営で成功してきたのです。ところがこの10年、企業はこの日本的経営もとっぱらってしまい、非雇用正規社員が先進国でも例を見ない4割という社会になってしまったのです。

山本七平は「指導者の条件」の中で、日本人が作り出した組織は、「一揆」だと言います。一揆というと百姓一揆をイメージしますが、もともと利益に基づいた集団規約を指すのだそうです。そして、その建前は全員平等なのです。足利時代から戦国にかけて地方小領主が、安全保障のために同盟しはじめたもので、この時代、武士も百姓も町人もみんななにかしらの一揆に入っていたそうです。そしてこの一揆の組織が周囲を取りこみ大きくなったのが戦国大名だそうです。織田信長も毛利元就も皆この成立過程を経てきているわけです。

徳川家康の大変優れたところは、その日本的組織を十分把握した上で、江戸幕府のシステムを作っているところです。士農工商それぞれの階級が独立していて、それぞれ皆哲学と誇りを持っているのです。そして組織体系はその階級のなかでは、皆が平等な一揆を形成していったのです。

明治に入り、西欧のシステムに合わせようとしたのですが、もともと日本人は外部のシステムを日本的に改良して入れるものは入れるし、受け入れられないものは定着しません。ボトムアップ型の組織がまさに西欧型ツリーシステムのなかで、日本型一揆組織を実現した組織なのでしょう。

しかし、この10年のグローバル化で、日本企業は派遣社員を4割にまで増加させてしまいました。正社員も、年配者からどんどんリストラしました。これは500年以上続いた日本型一揆組織の排除に他なりません。その結果、日本の企業の生産性は先進国最下位まで転落したのです。

それでは、これからどのようになるのか。くしくも、先週篤姫が江戸城を去る前に言った言葉があります。「私たちが残すのは、徳川の城ではない。徳川の心を残すのです。」
徳川時代は9割近くが農民で、農民も一部の小作人以外は自営であり、そのリーダーは民意で選ばれ、農村は自治が中心に営まれていました。今の企業も、中小企業が9割であるのと同じようなものでしょう。篤姫が言うように「徳川の心」を思い出せば良いのです。
「徳川の心」とは、徳川幕府が作り上げた日本の一揆型組織の心なのだと思います。徳川幕府の崩壊とともに幕を開けた欧米追従の国家はもう限界です。

具体的にどうすればよいのか。ITを使うことです。企業も、社員も、SOHO、フリーターも、ニートも、失業者も、破産者も今、自分はどのような付加価値があるのか。どのような人たちや組織を結びつければお金が入ってくるのか。自分や会社や他の人たちとグループウエアで結び、一揆型組織を形成するのです。これこそ日本が古来より受け継がれていた農村共同体のシステムであり、それを引きつぐ一揆型組織なのです。

エコノミーパソコンは5万円を切り、ただで購入し、つきづき通信費を払えばよいものまで出てきました。またメディアファイブでは個人の利益を分配するグループウエア「則天」を開発しました。いつでもASP型もあるので、インターネットから簡単に導入することができます。もう環境も準備もできているのです。あとは皆さんの「やる気」です。

お断りしておきますが、私は鎖国主義者ではありません。日本は米国の属国という人もいますが、国際社会の中で生き抜くには、序列の中で生きるのは仕方のないことです。徳川家康だって織田信長に追従して妻子を殺させられた。それはどんなに戦国武将といえども誰も味わえない苦しみを味わったのだと思います。それでも、じっとこらえた。そして信長亡きあと、今度は格下と思っていた豊臣秀吉に横から天下を取られました。国替えまでさせられた。それでも慎重にこらえ、誇りを持ち続け、280年にわたる、日本人の特徴をよく活かした、ある意味では理想的な国家を建設することができたのだと思います。日本は形式上は独立国の形態を保っているのです。戦前のように、欧米のグローバリゼーションと距離を置くことは、そのまま国際社会の孤立化に進みます。

われわれ日本人にアメリカンドリーム的な野望のある人は少ないと思います。ほとんどの人たちがプールつきの家やジェット機を持つことをうらやましいとは思わないでしょう。それより、小さな家庭菜園で野菜を作ったり、温泉に行ったり、家族の団欒や精神的満足を求める人のほうが多いと思います。だから身の回りの生活に満足できれば、国際社会のなかでの搾取にそれほど目くじらを立てる必要はないと思います。ただ、本当に貧しい人々はなくさなければなりません。失業した人やニート、フリーターの人々の能力を生かし、公平平等に分配するシステムが必要なのです。だから今こそ皆がITを使いこなす時です。そしてグループウエアで知恵を出し合い、利益を生むしくみを真面目に必死に作り出すことです。失業者も、フリーターも、ニートも、派遣社員も、経営者も、社員も、SOHOもみんなで力を合わせて日本人の最も得意とする、一揆的組織をもう一度復活させましょう。われわれ庶民はわれわれにできる一つ一つの仕事を利益の上がるものに、生計を立てていくために、追いかけていきましょう。

歴史は繰り返すと言います。もちろん形を変えて。今、西欧合理主義に無理やり追従して140年、その自分たちにあわない窮屈な鎧を脱ぎ棄てる時なのかもしれません。篤姫の言う「徳川の心」をもう一度思い出すときなのです。

今日、宮崎あおいさんが、滅びゆく徳川の時代のなかで、どう次の時代を示唆する「きらり」を演技するのか、楽しみです。

About

2008年12月14日 13:08に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「大不況を大好況と感じられる方法」です。

次の投稿は「生成AI時代の歩き方 終戦記念日」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

ブログパーツ

Powered by
Movable Type 3.34