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渋沢栄一とお花見

私は埼玉ニュービジネス協議会という、主にベンチャー企業の経営者の集まりに属しております。その中で、交流委員会、渋沢委員会、IT・教育委員会というものがあり、私はIT ・教育委員会をコーディネートさせていただいております。

先日渋沢委員会で渋沢栄一資料館の見学とお花見を王子飛鳥山でおこない、私も参加させていただきました。

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渋沢栄一資料館は10年ぶりに訪れました。10年前、どうしてビジネスはなかなか巧くいかないのだろう、と思い悩みながら電車に乗っていると、飛鳥山が目に入り、そういえば、ここに渋沢栄一の邸宅があったと思い、思わず見たくなって途中下車しました。

10年前は冬の夕暮れだったので、暗いイメージが記憶に残っていましたが、今回はお天気で、桜も満開で、飛鳥山はお花見で賑わっていました。館長さんに案内していただき、いろいろと説明を受けました。

10年前には、なぜ渋沢栄一が成功したか、よくわからなかったのですが、今思うと、次のようなことではないでしょうか。

1、徳川慶喜の家来となり、その側近である平岡円四郎に認められたこと。
2、幕府使節団としてパリへ行き、資本主義のあるべき姿を知り、必要なものを日本に作った。
3、「共存共栄」の思想が、周囲の人と金を集めた。
4、家が商家であり、しかも小さい頃から論語を学んでいました。そのことがマックスウエーバーのいう、ヨーロッパとピューリタンと似たような、日本武士道と論語という資本主義を成長させるための教育を、渋沢は偶然うけてきた。

前にも触れましたが、私は渋沢栄一の「処世の王道」という昭和3年発刊の古本を偶然古本屋で見つけました。この本は大正12年に発刊しようとしたのですが、関東大震災で紙型が焼失し、それ以後絶版になっていたものが、渋沢の米寿の祝いに改めて昭和3年、発刊したものです。

その内容を要約すると、
1、なぜ論語を学ぶのか
・論語は父、年長の従兄から学んだ。
・論語は実践しやすい
・維新前の商工業者には素養がない。維新後、外国との交流も始まったので、品位を高めなければならない。

2、徳川慶喜の家来になる
・幕府は早晩つぶれるので、慶喜公の将軍就任には反対
・豪族政治になると思っていた
・パリ万国博に大使として派遣される
・静岡で商工会を開く
・勝海舟は慶喜公を静岡におしこめる
・函館戦争に榎本武明にさそわれる
・大久保利通に嫌われる。識見卓抜で、その才能たるや、底の見えぬ気味悪さ
・西郷隆盛は賢愚を超越
・木戸孝允は文学の趣味が深く、考えも組織的
・勝海舟はこの三公の器まで行かない
・祖先崇拝は温故知新
・江藤新平と黒田清隆は自分の意見を押し通す
・伊藤博文は議論好き。論理的かつ博覧強記で相手を説得。

3、富貴は正道をもってする
4、算盤の基礎を論語の上におけ
5、西郷は情に流され、江藤新平は残忍にはまる。大久保利通はその間。
6、商売は商戦にあらず
戦いは相手を倒すことにあり(+―)商売は相手も幸せにする(++)。

7、西洋と東洋と道徳のちがい
西洋:よいことはなるべく人に勧める
東洋:己の欲せざることは人にすることなかれ
というものです。

とくに幕末の偉人が等身大に描かれていて、とても面白かった。

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話は渋沢記念館の見学に戻りますが、今回の見学で、もっとも印象に残ったのは、館長さんがとくに強調していたのが、栄一が政治の道を選ばず、経済の道を選んだ、ということです。

私も世の中を良くするのは経済だと思っています。特に、15年前、ポール・ケネディの「大国の興亡」を読んだとき、いかに経済が歴史を作ってきたかを痛感しました。

渋沢が作った企業群は現在も日本経済の中心を担っている企業が多く、もし今日、グループ化すれば、もちろん日本一のグループになるでしょう。しかし渋沢は会社を作っても、私物化をしませんでした。戦後、財閥解体のとき、GHQは渋沢一族が、財閥と見られている割りに、財産があまりに少ないことにびっくりしたそうです。

渋沢に私欲がなかったから、渋沢に金と権力が集まったのでしょう。ひょっとしたら維新の英雄より、渋沢のほうが、よほど今日の日本の礎を築いた人なのかもしれません。

お花見の帰りの居酒屋では皆大変盛り上がりました。

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2008年04月19日 23:16に投稿されたエントリーのページです。

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