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孫子の兵法 地形編

(通ずる者)開けたところ 敵味方どちらも行きやすい場所は、敵よりも先に高いところを占領し、補給路を確保して戦えば、必ず有利になる。

(さまたぐ者)進軍はやさしいが、撤退が難しいところは途中に難所のあるところである。そこに敵の備えがなければ勝ち、あれば負ける。

(支るる者)道が枝分かれしている場所は先に進んだほうが負けである。

(隘き者)両側が岸壁で道がせばまっているところでは、そこに兵力を厚くして敵軍を迎えればよい。敵軍が隘道に兵を厚くしていたら、戦ってはならない。少ない兵で守っていたら攻撃すべき。

(険しき者)高く険しい地形では敵よりも先に高くて日当たりのよい場所に陣取って敵を待ち受けよ。もし敵に先に占領されていたならば攻撃してはならない。

(遠き者)両軍が遠く隔たって対峙しているときは、敵軍を誘い出さなければならない。

指揮官が怒って司令官に従わず、敵に遭遇すれば、自分の憤りによって勝手に戦ってしまい、

司令官もその指揮官を評価しないような場合を、崩という。

司令官が弱く威厳がなく、命令も徹底していない、
将校、兵士も動揺し、軍の陣をあちこちに移動させたりするような場合を、乱という。

司令官に敵情を判断する能力がなく、小部隊を大部隊に向かわせたり、弱兵に強兵を攻撃させたりして、軍が敵の力を見分けることができないことを、北という。

以上の六つは、敗北につながるもので、司令官が必ず心得ていなければならないことで、十分に理解していなければならない。
{解説}
(通ずる者)オーソドックスなビジネスの手法はだれもが思い付くものであるから、他社より早く、効果的なアピールをし、市場投入する必要がある、ということ。ビジネスには常に工夫が必要で、当り前のことを当たり前に行っていては、利益は得られない。工夫が思い付かなければ、他社より有利な状況を考えださなければならない。

(さまたぐ者)ビジネスとして参入するのはやさしいが、撤退するのが難しい市場がある。この場合、強力なライバル会社がある場合は、参入しないほうがよい。たとえば量販店に商品を流す場合、継続して流していても、返品の問題は大きい。競合商品が多くあるほうが、赤字になりやすい。シェアが高ければ、効果的である。

(支るる者)道が枝分かれしている場所は先に進んだほうが負けである。ビジネスでもっともものにならないことは、ちょっと利益があがらないと、すぐに方向転換して、いつまでたっても利益があがらない場合です。方向性を一度決めたならば、そこでどのように利益をあげるか、粘り強く試行錯誤することが大切です。

(隘き者)小さい会社ほど、ニッチな市場でまずチャレンジすべきでしょう。そこで、シェアナンバーワンになったならば、その市場をいかに拡大するか、大企業と組むことが得策です。もしニッチな市場にすでに強力なシェアナンバーワンの企業がいれば、その市場はビジネス投入を回避したほうがよいでしょう。

(遠き者)すぐに利益をあげることのできないビジネスは、なるべく経費を使わず、利益をあげる機会が近づいてくるのを待つことです。

現場スタッフがリーダーに従わず、お互い感情的な状態を崩という。
現場スタッフがリーダーをなめて従わず、命令も徹底しない場合を乱という。
リーダーに判断能力がなく、とんちんかんな命令をだすことを北(にぐる)という。

崩、乱、北の状況はリーダーの能力不足から起こるもので、そういう状態を放置すると、組織が崩壊します。

敵情を知り勝算を立て、地形の険しさや遠近を把握するのは、上将(司令官?)の役割である。
このことを理解して戦えば必ず勝ち、理解せずに戦えば必ず負ける。
だから、勝てる見込みがあるならば、君主が戦うなと言っても、
戦うべきである。勝てる見込みがないときは、君主が戦えと言っても、戦うべきではない。

したがって、勝ち進んでも名誉を求めず、退却しても罪を受ける。
民衆の安全を守り、君主の利益のために尽くすのが、国の宝となる司令官である。

司令官は、兵士を自分の赤ん坊のように見るものである。
だからこそ、深い谷へも一緒に行けるのである。
司令官は、兵士を我が子のように見るものである。
だからこそ、一緒に死ぬこともできる。
甘やかして戦わせることができなくなったり、愛する余り命令することができなくなったり、
秩序を乱しても抑えることができなくなっては、たとえれば、わがままな子供が役に立たないように、兵士として使い物にならなくなってしまう。

ノミュニケーションをあまり頻繁に行うことは、上記のような問題を誘発する。

自軍が攻撃するのに十分備わっていると分かっていても、敵が自軍より優勢で今は敵に攻撃を仕掛ける時ではないことが分からなければ、勝負は五分であろう。

今が敵を撃つべきだと分かっていても、自軍が攻撃する準備ができていないのを分かっていなければ、
勝負は五分である。

敵を撃つときだと分かっていて、自軍の準備が整っていることも分かっていても、地形が不利であることが分からなければ、勝負は五分である。

だから、軍の動かし方をよく分かっているものは、動き出してから迷うことはなく、兵を挙げてから追い込まれるということはない。

だから、敵を知り自分を知れば、確実に勝つことができる。

天のめぐりと地の利を知れば、完全な勝利を収めることができる。

リーダーとしての能力は迷うことなく、あるべき組織の動く方向すべてが、一寸もたがわず見えることにある。そういう状況にならないうちは、リーダーになってはならない。


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2008年05月24日 20:39に投稿されたエントリーのページです。

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