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孫子の兵法 虚実編 無形に至る

兵を形するの極は、無形に至る。

色即是空 空即是色という般若心経の有名な一節があります。形あるものはすなわち無であり、無はすなわち形あるものとなる、という意味なのですが、平家物語の諸行無常のように形あるものはいつか滅びて無になる、ということだけを言っているのではないと思います。

これこそバーチャルとリアルの関係、デジタルとアナログの関係なのではないでしょうか。孫子の兵法の主題は、いかに気の流れを読み取り、それを生かして、いかに戦いに勝つ、ということが本質なテーマです。戦上手は戦う前から勝敗を理解できます。戦う気がこちらに味方するまでは動かない、というのは戦上手の徳川家康の真骨頂でしょう。

ビジネスでも人間関係でも、心があり、人が動き、形ができる。IT社会になるまでは、この過程の時間が長かった。インターネットが人々の生活の主流になると、ネット上でのあらゆる活動がそのままビジネスに直結する、という点で本当にバーチャルが魔法のように現実(リアル)に影響するようになりました。
ソフトバンクの孫正義氏はリアルなビジネスは限界があるけれどバーチャルなビジネスのインパクトは無限大だ、といっています。リアルなビジネスで苦労して会社を上場(本当に苦労して)、バーチャルなビジネスで飛躍した初代の成功者の至言だと思います。

しかし、バーチャルなビジネスほど参入しやすく、ちょっとしたことですぐにひっ繰り返されます。だから玉石混合であらゆるものが参入し、マネーロンダリングの温床となり、ある意味、業界全体で見れば、インチキや犯罪も多く胡散臭いイメージが出てしまいます。しかしそれは新しい時代にはつきものです。勝者に対する嫉妬も含めた庶民のイメージ、マスコミのイメージもあるかもしれません。

そういうリスクは多いけれども、バーチャルな意志がリアルに実現できる可能性が高くなる、ということは、より運より実力による成功が高くなる、ということではないでしょうか。

生物には必ず死があります。これは生物の存在を維持するために最も高度な戦略だそうです。社長ブログでこのことは書きましたが、 固体は、長い年月のうちに老化し、傷つき、変質します。ところが生殖機能をつけ、固体を再生する遺伝子情報だけを伝達できれば、生命体は常に新しく、増殖していくことができます。 そして生命体は、老化すれば癌が発生するように遺伝子データが変質する可能性が生まれるのです。だから生命体は遺伝子を保護するためにあらかじめ死をプログラムしている、という説があります。

これからの企業も、企業を発展させるものは資本でも土地でも労働力でもなく、その企業のなかで培ってきた企業ノウハウではないでしょうか。つまり流動的な労働市場のなかでいかに素質ある人材を確保し、ノウハウを伝授して育て、かれが築いたノウハウをフィードバックさせ、効率よく次の新人に伝授するか、ということが企業の重要な”資本”となるのです。

孫子は「無形に至る」といいます。経営戦略の究極はこのことばに語りつくされているように思えます。会社の究極の戦略はこの遺伝子の手法ではないでしょうか。「遺伝子経営論」です。

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2008年05月24日 20:29に投稿されたエントリーのページです。

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