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「景気循環の波を活用した組織と個人の生産性飛躍法」―孫子の兵法を現代経営に活かす 補足

「景気循環の波を活用した組織と個人の生産性飛躍法」―孫子の兵法を現代経営に活かす
7月2日に、埼玉県中小企業公社の勉強会で、90分のコマで講演をさせていただきました。演題は上記のものです。今年の4月に「究極の経営」という本を出版し、6月に「孫子の兵法DS」を発売しましたが、その内容を題材にしたものです。久しぶりのスピーチで、時間配分がうまくいかず、思ったことの半分もお話できなかったのですが、とても楽しかったです。勉強会には、埼玉県下の2世経営者の方たちが、41人ほど参加されました。

さすが、皆さん大変優秀な方たちばかりで、頂いた質問や意見も大変鋭いものでした。お答えしきれなかったことがあるので、このブログで補足説明をさせていただければ、と存じます。
この日のテーマの本質は、「いかにうまく人を使うか」ということだと思います。ただ、私は人を使うことは旨くありません。自信もありません。はっきり言って苦手です。だから、「則天」という人を使う、組織を動かす道具を作ったのです。そして、その道具の設計思想の基本は「孫子の兵法」にあります。

そもそもなぜ「孫子の兵法」なのか。「孫子の兵法」は2500年前に書かれた戦争に勝つための兵法の書です。人間と組織の心理の本質をとらえ、組織が目的に向かっていかに効果的に力を発揮させることができるか、を説いたものです。組織の力を永続的に最大限発揮するポイントは、一重に環境適応能力にあります。そして2500年間、古今東西、歴史上の名将といわれるリーダーのバイブル的存在が「孫子」なのです。この2500年間、文明はめまぐるしく変わりましたが、人間の本質的な心理は変わりません。みんな野心があり、保身があり、不満があり、夢があり、欲がある。そういう一人一人をいかにうまく結び、束ね、目標達成へ向けて、リーダーが活動するか、そういうリーダーの苦労も変わらないのだと思います。

古来より、日本人には、日本人の組織を活かす知恵があります。それを現代の経営に活かすためには、「孫子の兵法」という、古今東西のリーダーが利用してきた「教科書」を利用して表現することが適切なのだと思い、経営と孫子をミックスした本にしました。有史以来、もっとも読み継がれてきた書物といえば、西洋では聖書、日本では法華経と般若心経、でも古今東西問わずリーダーのための読みものは「孫子の兵法」です。

日本では、武田信玄の「風林火山」が有名ですが、「孫子の兵法」のエッセンスの一つはこの「風林火山」にあると思います。

「兵は詐を以て立ち、利を以て動き、分合を以て変を為す者なり。故に其の疾きことは風の如く、其の徐(しずか)なることは林の如く、侵掠することは火の如く、動かざることは山の如く、動くことは雷の震うが如し。郷を掠(かす)めて衆に分かち、地を廓して利を分かち、権に懸けて動く。」

簡単に言えば、組織を一つにして集中と分散を的確に行い、風林火山のように動くべし。その極意は公平平等の分配にある。組織を風林火山のように臨機応変に素早く動かすには、公平平等の分配がもっとも重要だというのです。つまり、最強の組織にするには「公平平等」な組織にすることが基本だと、孫子は教えます。

だから私は、企業においても公平平等な評価をするシステムを作ることが、なによりも重要であるとご提案するのです。当社の開発した「則天」ではどのようにしているかご説明しましょう。

今、ここにある4人のチームで仕事をして、報酬100万円もらったとします。Aさんはリーダーで給料を時で換算すると4000円。Bさんは3000円。Cさんは2000円。Cさんは1000円。

採算項目、つまりお金を稼ぐプロジェクトなり、お客様にどれだけ貢献したか、まず時間×金額で貢献度を出します。
A課長はトータル5時間で20000円の労働コスト。B係長は9時間で27000円の労働コスト。Cさんはトータル10時間で20000円のコスト Dさんは10時間で10000円のコストです。
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単純にいけば 20000円:27000円:20000円:10000円です。
ところが、この仕事A課長のお客様の仕事で、A課長の貢献度が大きいとします。
すると定性評価で修正して 3:2:2:1 となりました。
これに加えて採算評価を6割、人事評価を1割、スキル評価を1割、情報貢献度を1割、学習(カイゼン度)を1割とします。スキル評価は業務マニュアルをよく書いて、部下などがよく参考にしていると、評価が高くなります。その度合いを調整して…
A:B:C:Dは4:3:2:1となり、100万円の利益をその割合で分配すると、
40万円:30万円:20万円:10万円と分配されます。
6割は利益貢献から分配し、4割は日頃の組織への貢献度で評価するのです。もちろんこの割合は企業によりまちまちですから、割合を自社の方針に沿って変更してください。
このようにすれば、社員はアンモラルに数字ばかり追うことはしなくなります。

組織貢献やチームで仕事をとってこようと考え、行動していきます。
このように本来ならば、評価とは、だれが今月どれだけ売り上げたかの積み上げでしかありません。
しかし、営業成績だけで社員を評価すれば、社員は個人プレーに走ります。個人プレーの集合体の組織には限界があります。
善く戰う者は、これを勢に求めて人に責めず、故に能く人を択びて勢に任ぜしむ。
(戦争がうまいリーダーは組織の勢いに求めて、人に依存しない。適材適所で組織を動かす)
「孫子の兵法」でもこのように組織の能力を高めて目標を達成しろ、といっています。リーダーの人格や能力を高めるのではなく、システムで統治すべきなのです。始計篇の冒頭で道、天、地、将、法を組織運営の原点にしています。道つまり教育と命令を一体化するシステム。天つまり会社全体の状況を見える化するシステム。地つまりビジネスの環境を子細に把握できるマーケティングシステム。将つまりリーダーシップを発揮させるためのエッセンス、スタッフを公平平等に評価するシステム。法つまり組織を社会性を逸脱させず、効率的、発展的に進歩させるシステムづくりが大切なのです。「孫子の兵法」は極論を言えば、組織を環境適応に強い、組織レバレッジの強いシステムを作れ、ということなのだと思います。

よくリーダーは、自分の人間的魅力や器を高めようとします。しかし、それが本当にすばらしい組織をつくるのでしょうか。この事例は適切ではないかもしれませんが、今週の「週刊文春」に石原裕次郎の元マネージャーの記事が載っていて、自分が裕次郎にかわいがられれば、かわいがられるほど周囲にいじめられ、それに耐えられなくなりやめた、という話でした。

したがって、カリスマ的な自信のお持ちの方でも、システマティックに経営を行うほうが、繁栄を永続的にすることが可能になるのだと思います。歴史をひもとけば、信長は大変カリスマ的であり、秀吉は稀代の人垂らしです。けれども、もっとも人気のなかった家康の時代が270年にも及んだのです。しかも史上最も平和で、最も豊かで、最も知的な時代だったのです。

先日のセミナーの主題で、あまり言及できなかったところを補足させていただきました。

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2009年07月05日 14:57に投稿されたエントリーのページです。

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