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孫子の兵法 用間編


孫子は言う。もし十万の軍隊を動かし、離れた場所へ遠征したとすると、

人民の出費、国家の軍事費は、一日あたり相当の額になり、

国の内外で動揺が起こり、道端で怠け、仕事に集中できない者が大勢出て、

何年も膠着状態が続いた末、一日で勝敗が決まってしまうような戦いが起こったりする。

だから、いくらかの出費を惜しんで、敵情を知らないままに戦うというのは、全く問題外である。

これでは、費との上に立つ司令官とは言えない。君主の補佐役とは言えない。勝利を修める人物ではない。

聰明な君主、賢明な司令官というものは、行動に出れば勝利を修め、

成功をするのは、あらかじめ敵の実情をよく知っているからである。

敵情は鬼神から教えてもらうわけにもいかないし、

過去の出来事から判断できるものでもないし、占いによって予見することもできならない。

必ず、人を使って情報を得て、敵情をしらなければならない。

諜報員を使うには五つの方法がある。郷間、内間、

反間、死間、生間の五つである。

この五つが同時に行なわれたら、敵は実際に何が起こっているのか知ることはできなくなる。

これは既に人間業ではなく、国家の宝である。

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昔、就職活動のとき、あるアパレル会社の面接で、重役に産業スパイにならないか、といわれて、「そんな仕事があるのか」と腰を抜かしたことがありました。もし産業スパイという仕事についていたら、当時想像だにしなかった、ユニクロという怪物の前にいまごろ失業していたかもしれません。

戦争の場合、一瞬の出方次第で勝敗が決まることもあるので、スパイは大変重要なファクターだったでしょう。しかしビジネスの場合、直接は顧客に対し商品が売れるか、売れないかであり、「敵を倒す」という要素が少ないため、スパイのプライオリティは低下します。もちろんどの企業もライバル会社は存在するでしょうが、直接相手を倒すのではなく、顧客に受け入れられるか、否かです。ただ情報収集、分析という観点は重要な要素であることは変わりはない。

ただどんなに情報を集めても、それで利益が出る、とは限りません。現在、インターネットを活用すれば、相当な情報を収集することができます。今日必要とされているのは、収集した情報の分析力ではないでしょうか。

ターゲット顧客の情報、市場環境、購買者行動の分析、価格効果、競合他社の影響など必要情報を分析し、商品や販売方法を改善しいかに購買者に購買決定をさせるか、ということが最終目的になります。

現代では、市場をよく知るためには、スパイなどしなくても、ライバル会社と仲良くなって、お互い情報交換をして市場を拡大していくことのほうが、建設的で、意味のあることでしょう。

倫理に反するスパイ活動はかえって企業のイメージダウンにつながりやすくなります。
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郷間とは、敵国の民間人を使うことである。

内間とは、敵国の官僚を使うことである。

反間とは、敵国の諜報員を使うことである。

死間とは、虚偽の情報を自国の諜報員を使って敵方に伝えることをいう。

生間とは、敵国に侵入して情報を得てくることをいう。

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日本はスパイ天国といわれ、他国からは、様々なこういった諜報活動で日本の世論や市場は操作されているようです。特に、ビジネスシーンにおいて、こういう活動が活発化しています。もちろん大企業のオーナーや、トップクラスの人々は、あからさまではないにしても、こういう役割をする人たちをネットワークしているでしょう。大企業で時々おこる不可解な現象はこういったベースがあるのは確かです。ただ一般のわれわれには無関係なことなので、影響のある所だけ注意して、防衛するべきでしょう。マネをすることは大変危険です。

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だから、軍の仕事のなかで、諜報員と親しくし、

報酬を十分に与えるのは重要なことで、さらにその仕事は秘密裏に行なわれなければならない。

生まれながらの智者でなければ、諜報員を使いこなすことはできない。

道義を重んじるのでなければ、諜報員を使いこなすことはできない。

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ただ情報収集の場合でも相手から、信頼関係を感じてもらうように努力することは、大切です。「口が堅い」という印象も信頼関係を築くファクターでしょう。



微妙なことにも気がつかなければ、諜報員を使いこなすことはできない。

本当に微妙なものである。しかし、諜報員はいかなることにも有効である。

諜報員の機密がもれた場合は、その諜報員や関連した者も全員殺してしまわなければならない。

軍を攻撃する場合であれ、城を攻める場合であれ、人物を殺そうとする場合であれ、

必ずその司令間、側近、補佐役、門番、使用人の姓名を知っておき、

味方の諜報員を使って彼らの動静を調べておかなければならない。


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微妙なことに気づくためには、まえもって相手方の予備知識をもっていなければ、微妙なしぐさを感知できません。まずは仮説をもって情報収集することです。


敵国からやってきた諜報員は、必ず捜し出し、便宜を謀って、

味方につくようにする。このようにして、反間を使うことができるようになる。

敵国の諜報員によって、敵の内情を探ることができる。敵国の諜報員を使うことによって、敵国の民間人、官僚を諜報員として雇い、利用することができるようになる。

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これによっても、また、敵の内情を探ることができる。死間は、敵に虚偽の情報を流すのに使うが、敵の内情がわかれば、どのような情報を流せばよいかわかる。

さらに、味方の諜報員が必要な情報を集めてくることもできるようになる。

五間の仕事については、君主も必ず知っておかなければならない。中でも、反間についてを知っておくことは重要である。

だから、敵の諜報員は優遇しなければならない。

昔、殷が繁栄してきたころ活躍した伊摯は、元は殷に滅ぼされた夏の人間だった。

周が栄えてきたときに活躍した呂牙は、殷の人間だった。

だから、聰明な君主、賢明な司令間が、有効に諜報員を使えば、必ず成功を修めることができる。

これが、軍事において重要なことで、これがあるから軍隊は信頼して動くことができる。

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ビジネスにおいて倫理に反したスパイ行為は、危険だからやめましょう。この間諜編で参考になるのは、名刺交換した相手に、興味があれば、その会社の沿革やら好評されている情報から、その会社の収益の取り方を学び、その人と再開したときに疑問に思っていることなどを、さりげなく聞くことでしょう。
ビジネスにおける情報収集は、戦争におけるそれに比べ、はるかに複雑で難しく、情報を収集したからといってすぐにメリットが表れるとは限りません。商品やビジネススタイルを改善し、市場に受け入れられる試行錯誤の糧のひとつであることは確かです。努力だけは怠らないことです。


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2008年05月24日 20:54に投稿されたエントリーのページです。

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