« 家庭環境と正答率 | メイン | マルチメディアの意味 »

シュタイナーと生涯学習

20世紀は肉体の機械化の時代でした。

人間の足の何十倍、何百倍の速さで移動できる自動車や飛行機。人間の力の何百倍、何千倍のパワーを持つトラックやクレーン車。生活圏、経済圏の規模は飛躍的に増大しましたが、頭脳はアナログのままでした。そこには、頭は人間の原寸大、体はキングコングといったいびつな形の20世紀の人間像がありました。

文明は専門特化され、先鋭化し、古代哲学のような科学と芸術、哲学の融合という本来の学問の本質は捨て去られました。専門家を増産するため、学校ではペーパーテスト中心の試験で高得点の人間だけを選別し、企業に入っても、より現実の目に見える利益を上げることが最優先にされ、その貢献度を点数化し、ふるいにかける。本来集団で活動する本質的な協業は失われ、人をけ落とすことで自分の出世を計る。道徳は形骸化し、若者を育てる精神は失われ、年老いては無用とばかり切り捨てる。

20世紀後半に入り、コンピュータが発明され、パソコンが普及し、21世紀に入るとインターネットが生活に入り込んできました。今こそアンバランスに小さい頭を成長させる時なのです。

みなさんはシュタイナーという人をご存じですか。19世紀から20世紀にかけて活躍したオーストリアの思想家、教育家です。今日の教育学、教育現場に多大な影響をもたらし、彼の教育理論は教育のバイブルと言っても過言ではありません。

やや乱暴にかいつまんでいえば、彼の理論は、理想的な大人になるために、幼児期、児童期、少年期、青年期それぞれにおいてどのように教育していったらよいかを、その年代の視点に立って述べています。幼児期の教育理論を読むと、われわれは幼児の視点に戻って教育を考えさせられ、少年期のものを読めば、少年期を思い出します。その理論では、理想的な大人とは、社会に貢献する意志を持ち、創造性に富み、正義と勇気と道徳心を兼ね備えた人間ととらえられているようです。

思えば20世紀の教育は、専門的な部分にのみ重きを置き、道徳や創造性をむしろ軽んずるものでした。本来、社会、とくに資本主義下では、人々は協力しあい、安定した経済のなかで繁栄が築かれるはずです。ところが多くの人が利潤追求に走り、道徳を失い、自己欲求ばかり満たそうとするあまり、戦争が起きたり、貧富の差が増大したり、バブル経済が生じたりするのです。

放送法に守られたテレビと大新聞のみが情報伝達手段を握り、国民が偏った情報しか得られないことや、人口の急増に伴うマス教育と得点主義の教育の弊害などは、20世紀の人間が、肉体ばかり肥大(つまり機械化)して頭脳がアナログだったがための悲劇です。

シュタイナーは次のようなことを述べています。授業には算数や数学のように概念で考えるものと、体育や音楽のように手足を使って学ぶものがあり、実は双方が関連づけされて、理想的な教育が生まれると。これを簡単に言うと、「学ぶことと実技の融合」です。つまり企業でいうOJT(仕事をしながらその仕事の技術を学ぶこと)が最も理想的な教育なのです。
これを学校の学習で実行させるには、パソコンを使った学習が最も有効です。学んだことに関して、自分なりの整理をしたり、自分なりの考えを書き込んだり、いろいろな視点で情報加工したりするのです。

またシュタイナーはまったく異なる分野を関連づけて学ばせることの重要性も強調して示唆しました。たとえばエジプト文明を学びながら、生体における肝機能も学ぶ。それによって歴史的認識が身近なものとなり、生体への認識が歴史的継続であることを把握するでしょう。大切なことは知識ではなく、そういった皮膚感覚で認識をすることなのです。こういう教育は20世紀に入り、西洋科学の偏重、専門特化の追求、知識の偏重により忘れ去られてきました。歴史すらも日本史、世界史と分離して学習しています。

私はパソコンでこのような学びの本当の喜びを回帰させようと考えました。メディアファイブではワールドヒストリー(日本史と世界史を結びつける)、死地則戦(孫子の兵法、戦争シミュレーション、経営戦略、シェイクスピア、コンピュータビジネスの攻防を結びつける)の商品開発を通し、まったく異なる分野を結びつけることによる新しいコンセプトを生み出そうとしました。OJTが最も理想的な教育と言いましたが、企業こそ、最も人生で重要な教育機関になるべきだと思います。

メディアファイブでは20世紀には埋もれさせられていた理想的教育を復活させるために、コンピュータを使い、幼児には自然への回帰、小学生には学習の楽しさ、中学生以上には学問への能動的アプローチ、社会人には企業研修のなかで道徳教育こそビジネス教育の基本、というコンセプトで商品を世の中に広めていくつもりです。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.media-5.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/128

About

2008年06月08日 20:39に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「家庭環境と正答率」です。

次の投稿は「マルチメディアの意味」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type 3.34