マルチメディアとは、人から人へ、コンセプトの伝達の革命です。
「A」という人が「B」という人に自らのコンセプトを伝える場合、
アナログ方式では、Aは自らの脳でイメージしたものを言葉に置き換えてBに伝達し、Bは伝えられた言葉からAのイメージを再現します。このため、どうしても経験や能力の違いから両者のイメージの間にギャップが生じることになります。
一方、デジタル方式では、Aは脳でイメージしたものを音と映像を使ってハイパーテキストに構成し、BはAのイメージをモニター上で再現します。つまり、Bは、モニター上で直接Aの脳にあるイメージを見ることができるわけで、デジタル方式のメディアではアナログ方式に比べ、コンセプトの伝達能力が飛躍的に向上するのです。
レオナルド・ダ・ヴィンチの手記にこんな一説があります。
「鳥は、風のおかげで羽ばたきもせずに上昇するときには円運動を行う。風に向かって行動を起こす場合には、鳥は2つの力に押される。ひとつは鳥の翼の下の凸面に突き当たる風の力。もう一つは傾斜をなして下りる鳥の重さである。こういう速度を得たために、次のようなことが生じる。鳥が風の吹いてくる方向に胸を向けると、風は鳥の下で一定の重量を空中に持ち上げる。こうして鳥はその運動のはじめより遥かに高くまで反射運動を行う。これこそ鳥が羽ばたくことなく高く上昇する真の理由である」
実に画家らしく、映像イメージを重視した思考展開です。
なにかを考えるとき、その対象をイメージに浮かべながら考えることは重要です。歴史上の天才は、このようなイメージ思考により数々の大発見を果たしてきた。
科学を中心とする人類の進歩は言葉や数字すなわちメディアというツールを発明したがゆえに、個人の発明の積み重ねで発展しました。しかし個人の頭脳は有史以来、あくまで文字というメディアの上で思考してきたために、人類全体の思考能力は進歩していません。ソクラテスやニュートン、アインシュタインと言った天才はいつも時代の気まぐれがつくるものであり、現代人が古代人より優れた思考力をもっているとはいえません。いかにイメージ思考をできるかが個人の能力差となってあらわれるからです。今、パソコンが個人のものとなることで、万人がこのイメージ思考を日常的に展開することが可能となります。
文字は概念を伝える媒体で、概念を直接伝えるのはマルチメディアのほうが優れています。だから新しい概念を学ぶ場合、マルチメディアで伝えるほうがわかりやすい。だから遅滞者の学習にはとくにマルチメディアで学ぶことが有効なのだと思います。