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2025年05月 アーカイブ

2025年05月03日

AIの危険性は、教育のAI化で回避 NEXUSを読んで

ユラ・ハラリは、またセンセーショナルな本を出しました。「NEXUS 情報の人類史」です。この人は、「ホモサピエンス全史」「ホモ・デウス」と人類の指針となる本を出してきました。
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どれもとても重要な本ですが、今度の「NEXUS 情報の人類史」は我々の生活そのものに影響する、現存する最も重要な本というしかありません。

結論からすると、このAIの社会の浸透は、人類を破滅に導く、ということのようです。
じゃあ、AIを使うのをやめよう、というのは、不可能です。もう後戻りはできません。
なにか対策はあるのでしょうか?

このような問いかけを通じて、私たち自身が「考える」という訓練を日々積み重ねていくことが、これからのAI時代を生き抜く唯一の力になります。ハラリが『NEXUS』で危惧しているのは、情報をすべてAIに委ね、人間が「判断停止」に陥ることです。無批判にAIの答えを受け入れれば、そのAIを操るプラットフォームや政府、企業によって私たちの自由や意思決定が奪われかねません。

教育とは、まさに「問い続ける力」「判断を保留して多角的に検証する力」を鍛える場です。AIはあくまで道具であり、答えではありません。正しい問いを立てる主体性や、違和感やリスクの兆候をキャッチする感性、自分の言葉でものごとをとらえ直す力。これらを育てる教育が、いまほど必要な時代はありません。

AIの台頭は脅威であると同時に、学びのあり方を根本的に見直すチャンスでもあります。AIのまやかしを冷静に見抜く批判精神を、一人ひとりが身に付けること。それを支える教育こそが、ハラリの描いた「AIによる人類の悲観的未来」を乗りこえる唯一の希望です。

子どもも大人も「知る」ことの喜び、「自分で問い、考える」ことの大切さを学び直す時です。私たちが教育を再定義するとき、AIの時代も人間の自由な思考と創造性が灯り続けるはずです。

人類ひとりひとりが、AIをうのみするのではなく、出してきた答えに、いろいろな角度から分析し、AIのまやかしや、からくりを見抜く力を養うことです。もちろんAIをうまく活用して、より高度な知的レベルを獲得することを学ぶことは言うまでもありません。

たとえば、当社のツインAIシステムは、まさに、そういう目的で開発されました。
AIで出した答えに関連する情報や動画を集める機能がついてます。

さらに定例文でそのAIの解答の反論を示すAIを出すことも必要です。
「このAIの解答の問題点をしてして」
とか
「このAIの解答の反論を述べて」
とかです。

このような仕組みは、「唯一絶対の解答」に依存しがちなAI時代の教育にこそ不可欠です。自分が得た知識の根拠を探し、別の角度から比較し、反論を立ててみる――ツインAIシステムのようなツールは、まさに批判的思考のトレーニングを助けます。これからの教育現場は、「正答を素早く出す力」よりも、「なぜそれが正しいのか/正しくないのかを問い直す力」を養う場所へと変化していくでしょう。

AIによる情報は膨大ですが、その中身や背景、そして隠された意図を見抜けなければ、本当の意味で「知る」ことにはなりません。ハラリがNEXUSで描いたように、私たちはAIと共存する宿命にあり、AIの進化を止めることも、過去に引き返すこともできません。しかし、教育によって「情報を鵜呑みにしない目」と「新しい問いを生み出す力」を持つ人間が増えればAIがもたらす危機的未来を希望の未来へと変えていくことが可能です。

大事なのは、AIに支配される側で終わるのではなく、AIを理解し、活用し、人間が主体的に「選択する」知恵を持つこと。そのためには、一人ひとりが日常の中で問い、つながりを探し、対話することがこれまで以上に求められます。

私たちは教育によって、思考停止ではなく思考深化の道を歩まなければなりません。自分の頭で考え、疑い、議論しあうことで、AI時代を「人類の成長と自由の時代」に変えていきましょう。

AIと教育―この二つをどう結びつけ、どう使いこなすか。その意識が、私たちの未来を決める鍵なのです。

2025年05月16日

515事件と組織の問題

93年前、1932年の5月15日、515事件が起きました。
当時、1929年に起きた世界大恐慌のさなか、企業倒産が相次ぎ、大財閥は富を蓄積し、農民の貧困化は増し、
娘を売る東北の農民も数多くいました。
部下に農民出身が多い、青年将校は、そういった状況に反発し、クーデターが頻発していました。

もともと海軍の青年将校たちは、陸海軍横断的なクーデターを画策して、のちに226を起こした、陸軍の青年将校の安藤輝三たちに一緒にクーデターを起こそうと持ち掛けましたが、
陸軍は、皇道派の頭目である荒木貞夫が犬養内閣で、陸軍大臣になったことから、クーデターに反対し、むしろ阻止する方向で動きました。もしこの時、515事件が起きていなければ、226事件も起きず、太平洋戦争も防げたかもしれません。

当時の青年将校たちは、モチベーションも高く、私心なく、仲間で酒を酌み交わせば、天下国家を語る立派な青年であったのが、どうして、このような国家にとってマイナスになる行動を起こしたのだろうか?

一つは、兵学校という超難関の学校に合格し、陸軍海軍の中でのみ活動し、しかし、戦前は総理大臣を多く輩出するので、それなりのプライドとモチベーションを持っていたのでしょう。

戦前の教育は愛国教育をおこない、日本歴史を学び、儒学などの哲学も教え込まれたのに、それが行き過ぎて、515事件や226事件を引き起こしたのです。

当時も反中国的な雰囲気が、醸し出されていたのは事実です。

張作霖爆殺事件が起きて、それを引き金に、満州事変が起きましたが、犬養毅は、旧友である張作霖の張作霖の息子の張学良の日本の荷物を、中国に送り返してあげるなど、父を失った張学良を支援する動きに、515事件の首謀者は、犬養首相を中国とつながる政治家として、暗殺しました。

当時、近衛文麿のブレーンの尾崎秀美など、政治家の周囲はスパイが多くいました。もちろん日本の財閥も暗躍したでしょう。そのへんの雰囲気は、三島由紀夫の遺作「豊饒の海4部作」の2作目「奔馬」に詳しく描かれています。

しかし、現在の政治家とくらべると、一般人にしても、当時の日本人は誠実で、純粋で、正義感の強い国民だったことは間違いありません。

三島由紀夫英霊の声で、226の首謀者の霊に、「戦後、日本はちっぽけで、空虚な島に成り下がった、と言っています。」

これはすべて組織と個人の問題に起因します。

「5・15事件はなぜ軍隊の組織に問題があったのか?」という観点から考えてみます。


5・15事件の主役は、海軍の青年将校と一部陸軍将校、民間右翼団体でした。彼らは上官の命令や軍隊の公式な統制を無視して、独自にクーデター(首相暗殺)を決行しました。これは**軍隊の本来あるべき「上官の命令に絶対服従」の原則が崩れ始めていた**という重大な組織上の問題を意味しています。

青年将校たちの思想・使命感が行き過ぎて、組織全体を代表しない「個人や小集団の暴走」を許してしまった。この現象は、軍組織の根本的な綱紀の弛み、統制の弱体化を示しています。

① 独自の「正義」が優先された

青年将校たちは強い使命感・正義感を持っていました。その行動は「国家を正すため」「腐敗した政治を正すため」という、自己流の正義に基づいています。**組織内個人の「正義」「義憤」が組織のルールや上官の判断より優先される土壌があった**、―――これ自体が、軍隊の組織問題です。

② 組織内の意見対立・分裂

皇道派 vs. 統制派など、陸軍内でも海軍内でも派閥抗争や方針の違いが激化し、組織全体としてのまとまりや一貫した方針が欠如していました。青年将校の暴発を押さえこむ“内部統制力”が失われていたのです。

この結果、組織が分裂し、異なる意見や理念を持つ勢力が勝手に行動を起こせてしまう、という危険な状態となりました。

③ 社会と組織の距離/軍の“政治化”

また、軍の青年将校の多くが地方の貧しい出身であり、貧困に苦しむ家族や農村の現状を知っているため、「軍人としての職務」と「国や社会を守るべきだという個人的信念」との間で葛藤がありました。

本来、軍隊は政治から中立であるべきですが、「大義名分」を掲げて政治に介入してしまう“軍の政治化”も組織の脆弱性です。

結論

5・15事件が示した「軍隊組織の問題」とは、

上下関係の統制・軍紀の弛緩
独自正義の台頭と組織意思の軽視
派閥抗争・意見対立(組織の分裂)
軍の“政治化”による本来任務の逸脱

こうした“組織の危機”が、青年将校によるテロ・クーデターを許した背景にあったと言えます。

この脆弱な軍隊組織が、その後の2・26事件や、軍部独裁・暴走、そして悲劇的な戦争への道を開いてしまったのです。

これにちかいことは、組織の大小にかかわらず、現代の組織でも起こります。

特に、若い人の多いモチベーションの高い若いベンチャー企業で起きます。

私も経験しました。

今、そういう組織の問題を解決するAIグループウエア「則天」の改良を検討しています。

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